中国軍機が日本領空侵犯!四大紙の社説読み比べ

中国軍機が日本領空侵犯!四大紙の社説読み比べ

2024年8月26日、中国軍の「Y9情報収集機」一機が長崎県五島市の男女群島沖の日本領空に侵入、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)するという事態が発生。

中国軍機による防空識別圏への侵入はこれまでにも幾度となくありその度に緊急発進を繰り返してきたが、領空侵犯となると戦後初である。

明白な主権侵害で、国際法上も領空侵犯されれば撃ち落としても問題無い。
日本では警告→領空外へ退去、または誘導→抵抗されれば撃墜、といったプロセスを経る規定であり、今回の事案では防衛省発表によると「通告及び警告を実施する等の対応を実施した」が、領空に侵入し2分間飛行、その後も周辺を旋回し続けたとの事なので最悪の場合は武器使用する事態に発展した可能性がある。

【画像】中国軍のY―9情報収集機による領空侵犯のルート
出典:防衛省ホームページ(https://www.mod.go.jp/j/press/news/2024/08/26d.html)

2023年度の空自のスクランブルは669回で、その内の約7割の479回が中国軍機に対してだったそうだ。
中国軍機に対するスクランブルは近年で最も多い2016年では実に800回を超えていた。
2009年(平成21年)時点では50回未満だった事を考えると実に約10倍、年によってはそれ以上、となる。

ここ数年内でも中国軍は

  • 尖閣諸島周辺への度重なる領海侵犯
  • 偵察・攻撃用無人航空機で沖縄本島・宮古島間を通過
  • ロシア海軍と組んで艦隊に日本列島を一周
  • 日本のEEZに弾道ミサイルを撃ち込む

などと徐々に日本に対する軍事的威嚇・威圧行為の度合いを高めてきたが、これはついに一線を超えてきた感がある。

今回の領空侵犯は偵察機によるものであり、侵略攻撃前に情報収集を実施した、つまり侵略の前兆とも受け取れるかもしれない。

折しも、前日の25日には毎日新聞が『小泉今日子 改憲の動きに「戦争に進んでしまう可能性が…」戦争知らない若い世代には「知る機会がない」』などという記事を掲載していた。
しかし、戦争に進んでしまう可能性があるとすれば日本の改憲ではなく中国の軍事的威圧の方だし、第一に、それを知る機会が無かったのだとすればそれは中国の脅威を過小評価、日本が悪い式の擁護をするばかりで正しく伝えてこなかった毎日新聞を含めたマスコミの怠慢である。

外務省の発表

この事態を受けてなのかは不明だが、27日、日本外務省は「最近の南シナ海における緊張の高まりについて」という記事で、南シナ海におけるフィリピンと中国の紛争において以下のように発表している。

  • 海上保安機関及び海上民兵の船舶並びに航空機の危険で威圧的な使用に断固反対
  • 仲裁判断は最終的であり、紛争当事国を法的に拘束するもので、我が国は、当事国がこの判断に従うことにより、南シナ海における紛争の平和的解決につながることを強く期待
  • 一貫して海における法の支配の貫徹を支持
  • 【外務省】最近の南シナ海における緊張の高まりについて 令和6年8月27日
    https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_01109.html

日本側はフェアに国際法に従おう、という姿勢である。
また、今年令和6年7月12日には、以下のようにも発表している。

仲裁判断を受け入れないという中国の主張は、国連海洋法条約を始めとする国際法に従った紛争の平和的解決の原則に反しており、国際社会における「法の支配」を損なうものです。

【外務省】南シナ海に関する比中仲裁判断発出から8年を迎えて(外務大臣談話) 令和6年7月12日
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/pageit_000001_00845.html

このように中国は国際法には従わないと明白に主張しており、まさに無法者そのものである。
このような法に従う意思もなく力をチラつかせる文字通りの無法者、ならず者に対しては、こちらも抑止力という力を強化させる他ないだろう。
「今攻めても勝てない」そう思わせる事は大事だ。 話し合いそのものを否定するものではないが、それはあくまでも力という裏付けがあっての交渉事だ。
力がない者の交渉事など、突っぱねられて終わってしまう。ウイグル、チベットなどがその典型例だ。 力が無いために蹂躙され、中国の一自治区にされてしまった。

「和をもって尊しとなす」精神は日本人固有のものだ。
外国人には通用しない。
悲しい事だが、今の人類はまだそのレベルなのである。
絵空事やSFの世界ではないのだ。

日本の全国紙4社の社説読み比べ

本題はここからである。
この事案を受けて、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞のいわゆる全国紙4大新聞が社説をどう書いたか読み比べてみよう。

まずは読売新聞から。

政府は領土・領海を守る体制を固め直す必要がある。
〜中略〜
自衛隊は、遠方の飛行物体も探知できる空中警戒管制機(AWACS)などを南西諸島周辺で重点的に運用し、中国機に対する警戒監視の体制を強化すべきだ。

【読売新聞】領空侵犯 中国は危険な挑発をやめよ 2024/08/28
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20240828-OYT1T50005/

これは抑止力、防衛力を強化する必要がある、という主張となるだろう。先に述べたように、法を無視すると主張する者に対して、話し合いを否定するものではないが、それは抑止力、防衛力という裏付けがあってのものだ。
読売の言う事はごく当たり前の主張のように思える。

2番目に朝日新聞。

「力対力」の構図だけでは、かえって地域を不安定化させる恐れもある。
〜中略〜
当局間のホットラインも開設された。こうしたパイプも最大限活用し、信頼醸成につなげたい。

【朝日新聞】(社説)中国軍領空侵犯 再発防止へ意思疎通を 2024/8/28
https://www.asahi.com/articles/DA3S16020243.html

記事タイトルからして「再発防止へ意思疎通を」ときた。
意思疎通で何とかなるだろ、という主張である。 しかし、誰も『「力対力」の構図だけで』解決しようとは言っていない。外交や話し合いを否定していない。
言ってもいない事を批判する、最近流行りのストローマン論法である。抑止力をつけさせたく無いのか。

それに、何度も言うようだが相手は国際法を無視する無法者である。力もない話し合いにどこまで効力があるのか。
また、橋下徹などが口癖のように言う日中間の「パイプ」とやらがどう役に立っているのか不明だ。

次に毎日新聞。

事態がさらに悪化しないよう双方が冷静に対話を続けるべきである。

【毎日新聞】中国軍機初の領空侵犯 緊張高める行動の自制を 2024/8/28
https://mainichi.jp/articles/20240828/ddm/005/070/102000c

こちらも朝日新聞と同じく対話で何とかしろという主張だ。
このような主張をする人物の周りには、理屈の通じぬ相手などおらず、すべて話し合いで解決してこれたのだろうか?
もしそうなら幸せな話だが、世界の全てがそうなってはいない事を知るべきだろう。

最後に産経新聞。

次に中国軍機が日本の空を侵す場合には、警告射撃や強制着陸の措置をためらってはならない。
〜中略〜
防衛力強化を急ぐべきときだ。

【産経新聞】<主張>中国軍機が初侵犯 「政治空白」を窺う挑発だ 2024/8/28
https://www.sankei.com/article/20240828-EK6URUOLPRKARNS4ENJLD33TZA/

他紙と比べると一見、過激なようだが、いきなり撃墜せよとは言っておらず日本政府が定めたごく当たり前の手順を示しただけと理解すべきだろう。

このように、各新聞社の社説はそれぞれ異なる視点から今回の領空侵犯問題を論じている。
読売新聞と産経新聞は防衛力の強化を訴え、朝日新聞と毎日新聞は対話と意思疎通の重要性を強調している。
いずれの主張も一理あるが、最も重要なのは日本が一貫して平和と安全を守るための適切な対応を取ることである。国際社会の中で信頼を築き、同時に抑止力を維持することが、今後の日本の安全保障にとって不可欠である。

参考記事

  • 【防衛省】中国機による領空侵犯について 令和6年8月26日
    https://www.mod.go.jp/j/press/news/2024/08/26d.html
  • 【毎日新聞】小泉今日子 改憲の動きに「戦争に進んでしまう可能性が…」戦争知らない若い世代には「知る機会がない」 2024/8/25
    https://mainichi.jp/articles/20240825/spp/sp0/006/339000c

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