中国海警局の準軍事組織化の記事で尖閣諸島周辺の領海侵犯に触れずに、接続水域航行を「パトロール」と表現する朝日新聞

中国海警局の準軍事組織化の記事で尖閣諸島周辺の領海侵犯に触れずに、接続水域航行を「パトロール」と表現する朝日新聞

※写真は台湾空域に侵入した殲16(同型機)

アメリカでバイデン大統領が就任した2021年1月21日の直後、中国のキナ臭い動きが目立っています。
まずはこれでしょうか。

【フォーカス台湾】中国軍機13機、台湾南西の空域に進入 1日として過去4カ月で最多 2021/01/23
日台湾の空域に進入したのはY8対潜哨戒機延べ1機、H6爆撃機延べ8機、殲16戦闘機延べ4機の計延べ13機。同部が公表した資料によれば、1日に飛来する中国軍機の延べ数としては、クラック米国務次官が台湾を訪問していた昨年9月19日(19機)以降最多だった。

引用:https://mjapan.cna.com.tw/news/achi/202101230005.aspx

【産経新聞】中国機、台湾防空識別圏に進入 前日上回る15機 2021.1.25
中国軍は24日、前日を上回る戦闘機など計15機を台湾の防空識別圏に進入させた。米台連携を打ち出すバイデン米新政権を牽制(けんせい)する狙いとみられる。

引用:https://www.sankei.com/world/news/210125/wor2101250001-n1.html

昨年9月19日以降最多の中国軍機が23、24の両日、台湾の防空識別圏に進入したとのことで、アメリカをけん制する意図がありそうです。

中国海警局の指揮系統図

中国海警局は軍事組織である

さらに、近年尖閣周辺への領海侵入を繰り返す中国海警局が正式に軍の指揮下に入り、準軍事組織・第二の海軍と化したという報道もありました。
この報道について新聞各社の記事の比較をしてみたいと思います。

ここでは重要なポイントである以下の2点の観点で比較してみましょう。

  • 「尖閣周辺の領海侵入」の言及
  • 「軍との一体化、軍事的任務」の言及

以下、比較表として簡単にまとめました。

「尖閣周辺の領海侵入」の言及 「軍との一体化、軍事的任務」の言及
日経新聞 無し 「重要な海上武装部隊」として準軍事組織としての位置づけを明確にした。 ~中略~ 東・南シナ海で「第2の海軍」として影響力を高めそうだ。
産経新聞 周辺で巡視船による領海侵入を繰り返しており、と、昨年10月には海警の船2隻が57時間39分にわたって尖閣諸島周辺の日本の領海に侵入し、平成24年の尖閣国有化以降で最長を記録 有事や演習の際に軍と同じ指揮系統の下で一体的に行動することが可能
読売新聞 無し 軍指導機関・中央軍事委員会の命令で「防衛作戦などの任務」を執行、と、有事には海警と中国海軍が連携して軍事的任務にあたる
毎日新聞 海警局の船が領海侵犯を繰り返す沖縄県・尖閣諸島周辺への影響は必至 警局を軍の最高指導機関「中央軍事委員会」の指揮下に置き、と、「海警局」を「重要な海上武装力量かつ国家の法執行力量」と位置付け、警察と国防という二つの役割を持たせた
朝日新聞 無し。昨年、中国公船が尖閣諸島周辺の接続水域を航行した日数は過去最多の333日にのぼり、ほぼ通年でのパトロール態勢を整えた 中央軍事委員会指揮下の人民武装警察部隊(武警)に編入され、人事や運用面でも軍の影響が強まった。法案提出者も中央軍事委員会で、海警を「海上武装力と法執行力」を有する組織と位置づけた

比較すると分かりますが、日経新聞、産経新聞、読売新聞はそれぞれ「第2の海軍」、「有事や演習の際に軍と同じ指揮系統の下で一体的に行動」、「有事には海警と中国海軍が連携して軍事的任務にあたる」と、明確に軍事組織としての表現を使っていますが、毎日新聞と朝日新聞は「海上武装力と法執行力」として扱っており、やや弱い表現となっています。
「海警局が軍事組織と思われたくない」と考えているのでは?と感じてしまうのは、ただの思い過ごしでしょうか。

なお、2018年の記事ですが「海上自衛隊幹部学校」サイトの記事では、明確に「武警指揮下の軍事組織」と書かれています。

【海上自衛隊幹部学校】中国海警局の指揮系統の変更について 2018/4/23
海警組織が非軍事組織である国家海洋局の指揮系統を外れ、軍事組織の根幹ともいえる中央軍事委員会の指揮下にある武警部隊の隷下に入った点が着目される。
~中略~
今回の中国側の指揮系統の変更により、我が国においては非軍事組織である海上保安庁がこれらの任務を担当する一方、中国においては武警指揮下の軍事組織である海警が担当することになった。 s_article_20210206_01.jpg

引用:https://www.mod.go.jp/msdf/navcol/SSG/topics-column/col-097.html

尖閣周辺への領海侵入について触れない朝日新聞

また、朝日新聞は海警局の船が尖閣周辺へ領海侵犯を繰り返していることについても触れていません。
代わりに「中国公船が尖閣諸島周辺の接続水域を航行した日数は過去最多の333日にのぼり、ほぼ通年でのパトロール態勢を整えた」と書いています。
領海侵入に触れずに、海警局は尖閣諸島周辺の接続水域をパトロールしている、と書いている訳です。
これでは中国の軍事的な威嚇・脅威度が弱まった表現になってしまっているのではないでしょうか。
まかり間違えば尖閣諸島周辺を「パトロール」しているイコール「尖閣は中国領海」、とでも誤読してしまいそうです。
日頃の朝日の報道姿勢をウォッチしている身からすると、そのように感じてしまいます。

以下、引用した各紙の記事を示しておきます。

  • 【日経新聞】中国の海警局「準軍事組織」に 新法で位置づけ明確化 2021年1月22日
    https://r.nikkei.com/article/DGXZQOGM227GM0S1A120C2000000?s=5
  • 【産経新聞】中国、武器使用認める海警法成立 尖閣諸島周辺での活動強化の恐れ 2021.1.22
    https://www.sankei.com/world/news/210122/wor2101220038-n1.html
  • 【読売新聞】中国の海保機関「海警」、武器使用可能に…尖閣周辺の日本船が対象の恐れ 2021/01/22
    https://www.yomiuri.co.jp/world/20210122-OYT1T50285/
  • 【毎日新聞】中国、「海警法」成立へ 国際法の解釈と異なる主張、尖閣諸島への影響必至 2021年1月22日
    https://mainichi.jp/articles/20210122/k00/00m/030/228000c
  • 【朝日新聞】中国で海警法が成立、武器の使用明記 尖閣諸島を意識 2021年1月22日
    https://www.asahi.com/articles/ASP1Q75T3P1QUHBI021.html

※アイキャッチ画像は台湾国防部サイトから
https://www.mnd.gov.tw/

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