【外国人への生活保護まとめ】生活保護対象は日本人のみだが、自治体の裁量で外国人にも支給されていた

【外国人への生活保護まとめ】生活保護対象は日本人のみだが、自治体の裁量で外国人にも支給されていた

留学・就労目的で来日したガーナ人が働けなくなったので生活保護を申請したところ、外国籍である事を理由に却下されたため裁判所に訴えた、というニュースが流れていました。
以下にNHKのニュース記事を示します。

【NHK】“外国人理由に生活保護申請却下は不当” ガーナ人男性が提訴 2021年12月14日
男性は留学と就労の目的で来日した3年後の平成30年、腎臓の病を患うなどして働くことができなくなったということです。
この間、在留資格はいったん切れましたが、その後、治療を受けるためとして、就労はできない条件で新たに認められています。
しかし、このままでは収入が得られないことから、千葉市に生活保護を申請したところ、外国人であることを理由に却下されたということです。

引用(リンク切れ):https://www3.nhk.or.jp/lnews/chiba/20211214/1080016708.html

この件については新聞、テレビ等の各メディアで背景を解説するような報道が十分にされていないように思えます。
中には「外国人に対する差別だ!」とでも言いたげな記事まで見受けられます。
外国人に対する生活保護は、法律上や実際の運用面ではどうなっているのでしょうか。
ここに簡単なまとめとして記事化しておきます。

この記事の内容

  • 生活保護法の対象は日本国民
  • 生活保護法で規定された「国民」に永住外国人は含まれない最高裁判決が出ている!
  • ただし、外国籍であっても人道的配慮で困窮した永住者等には法を準用するよう厚生労働省から通達が出ている
  • この通達により、地方自治体の裁量で実質的には生活保護費が支給されている
  • 入国からわずか数日の外国人が集団で申請した事件があった
  • 今後、外国人労働者の業種拡大で永住者が増える事になる

生活保護法の対象は日本国民

【画像】生活保護法のイメージ

生活保護法の対象は日本国民です。
まずはこれをハッキリさせておきましょう。
以下は法令検索の生活保護法からの一部引用です。

【e-Gov法令検索】昭和二十五年法律第百四十四号 生活保護法
第一条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
第二条 すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。

引用:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000144#A

明確に「国民」と書かれていますね。
これは当然、日本国籍を有する者、と考えられます。

生活保護法で規定された「国民」に永住外国人は含まれない最高裁判決が出ている!

では、外国人に対する生活保護費支給はどうなっているのでしょうか。
「最高裁の判決、外国人の生活保護は違法」という情報がネット上で散見されますが、これは以下の判決を指していると思われます。

【日経新聞】永住外国人の生活保護認めず 最高裁が初判断 2014年7月18日
同法が適用対象と定めた「国民」に永住外国人は含まれないと初めて判断した。

〜中略〜

同小法廷はこの日の判決理由で「生活保護法が永住外国人に適用されると理解すべき根拠が見当たらない」と指摘。

引用:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG18H11_Y4A710C1CR8000/

生活保護法に適用されると理解すべき根拠が見当たらないとあります。
地方自治体のご担当者は、自信を持って、そのように主張しましょう。

しかし、外国籍であっても人道的配慮で困窮した永住者等には法を準用するよう厚生労働省から通達が出ている

先の判決は、すぐ後にこのように続きます。

「行政措置によって事実上の保護対象となり得るにとどまる」と結論付けた。

旧厚生省は1954年、外国人に対しては生活保護に準じた行政措置を実施すると通知し、90年に対象を永住外国人に限定。現在は自治体の裁量で生活保護費が支給されている。

「生活保護法の対象は日本人のみだが、自治体の行政措置によって生活保護費が支給されている」事が分かりますね。
これを根拠として、外国人にも生活保護が支給され続けていますがこんな事で良いのでしょうか。
本記事では外国人への生活保護費支給は違法か適法かは言及しませんが、実態としては以上の通りになります。
旧厚生省からの通達により、結局は支給されているのです。

【画像】厚生労働省のイメージ

厚生労働省のwebサイトでは平成16年の社会保障審議会の以下のような資料が公開されていました。

【厚生労働省】第12回 社会保障審議会福祉部会 生活保護制度の在り方に関する専門委員会
第12回(平成16年6月8日)

適法に日本に滞在し、活動に制限を受けない永住、定住等の在留資格を有する外国人については、国際道義上、人道上の観点から、予算措置として、生活保護法を準用している

引用:https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/06/s0608-6a2.html

人道上の観点から、自治体の裁量に任されているという事です。
一例をあげると、広島市はこのように言っています。

【広島市】外国人への生活保護について 2021年4月6日更新
 外国人の生活保護については、生活保護法の第1条では、国は生活に困窮する国民に対して、必要な保護を行うと規定しており、外国人に対しては、生活保護法は適用されません。
 しかしながら、日本に在留している外国人のうち、永住者、日本人の配偶者、特別永住者などで、生活に困窮している方については、日本人と同様の要件の下に、法の準用による保護を行うよう、国は通知しています。

引用:https://www.city.hiroshima.lg.jp/site/kaitou/8376.html

ただし、外国人は保護の対象とならなくても不服の申し立てはできません。
厚生労働省の、別の資料から引用してみましょう。
以下は昭和29年、旧厚生省の社会局長から各都道府県知事にあてられた通知内容です。

【厚生労働省】生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について(昭和二九年五月八日)
(各都道府県知事あて厚生省社会局長通知)

(答) 外国人に対する保護等は、これを法律上の権利として保障したものではなく、単に一方的な行政措置によつて行つているものである。従つて生活に困窮する外国人は、法を準用した措置により利益を受けるのであるが、権利としてこれらの保護等の措置を請求することはできない。日本国民の場合には、法による保護等を法律上の権利として保障しているのであるから、保護等を受ける権利が侵害された場合にはこれを排除する途(不服申立の制度)が開かれているのであるが、外国人の場合には不服の申立をすることはできないわけである。

引用:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta1609&dataType=1&pageNo=1

「外国人への保護等は権利として保障しておらず一方的な行政措置であるから、不服の申立をすることはできない」という訳です。
故に、冒頭のガーナ人のケースでは申請を却下した事は不当ではありません。

大阪市で起こった中国人の生活保護集団申請

【画像】不正受給のイメージ

そもそも外国人に生活保護費を支給する、しないの判断を自治体に任せてしまって良いのでしょうか。
大阪市で悪用されていたケースを紹介します。
以下は大阪市自身のwebサイトで公開されている記事です。

【大阪市】中国国籍の方の生活保護集団申請について 2011年4月26日
この度、中国国籍の方が入国し、外国人登録が認められた直後に生活保護申請を集団で行うという事例が発生しました。

〜中略〜

・入国管理法では「生活上国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者」は入国を拒否することとなっているにも関わらず、今回のケースでは日本に入国してすぐ生活保護を申請している。このことから、法の趣旨を大きく逸脱した、在留資格の審査がなされている可能性がある。
・厚生労働省の通知では、形式的に在留資格を得ているだけで、生活保護制度を準用することになっている。
・結果的に、本市に何の裁量権もなく、生活保護法を適用しなければならないというのでは、市民の理解は得られにくく、また、4分の1の財政負担を余儀なくされる大阪市としても納得できるものではない。

〜中略〜

・また、大阪市の調査では、上陸から生活保護相談までの日数が平均9 日と非常に短く、提出された「資産申告書」には預貯金等がすべてなしと記載されていた。また、「扶養義務者申告書」には、仕送りなどの援助ができる親族の記載はなかった。さらに、保護申請書の申請理由が「仕事がないから生活に困窮する」との記載であった。 ・以上のことから総合的に判断して、今回の対象者は、生活保護目的の入国と見なさざるを得ず、本来、法の準用の対象ではないと認められるため、生活保護法の準用を取消し、支給した保護費の返還を求めるものとする。

引用:https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000086531.html

大阪市によると、入管法の運用がザルであるため、本来入国が拒否されるはずの困窮者が入国し直ちに生活保護を申請しているのだという。
入国管理局が入国を許可した以上、大阪市としては生活保護支給を決定さぜるを得ないと問題提起をしています。
厚労省の通知では結果的に自治体側には裁量権が無いのと同様であると。

彼らは明らかに日本の生活保護目当てに入国してきていますね。
MONEYzineに斡旋業者やブローカーの存在を窺わせる以下のような記事もありました。

  • 【MONEYzine】中国人32人が入国直後に生活保護受給 大阪市の財政を圧迫する貧困ビジネス 2010/07/12
    (リンク切れ)https://moneyzine.jp/article/detail/186482

この件に関しては大阪市が頑張ってくれたおかげで問題が明るみになり国の入国管理の厳正化にも繋がったそうですが、このような事件は大メディアがもっと取り上げるべきではないでしょうか。

外国人労働者の業種・永住権の拡大が進みつつある

【画像】外国人流入のイメージ

現在、人手不足を理由とした外国人労働者の「特定技能2号」拡大を政府は検討しています。来年2022年の春、正式決定を目指しているそうです。
過去記事がありますので、そちらを参照ください。

これが正式決定されると外国人永住者が増えるため、必然的に生活保護の申請も増える事が予想されます。
既に毎日新聞などは、外国人留学生・労働者向けに生活保護制度を定めよという主張を掲載し始めています。

  • 【毎日新聞】異国で耐える外国人留学生、労働者たち 生活保護制度も必要 2020/5/6
    https://mainichi.jp/articles/20200506/k00/00m/040/101000c

本当にこの流れで良いのでしょうか。我々のおさめた税金がこういう使われ方をしている訳です。
メディアには本記事でとりあげた程度の情報を読者・視聴者に提供するよう期待したいところなのですが、外国人への生活保護制度の必要性を訴えているのを見る限り、そのつもりは無いのでしょう。
これも報道しない自由の行使かと疑ってしまうのですが。

関連記事

広告