欧州の電動キックボード規制と逆行の日本、Luupは規制緩和で中国人観光客をターゲットに

欧州の電動キックボード規制と逆行の日本、Luupは規制緩和で中国人観光客をターゲットに

電動キックボードを巡る状況は、欧州と日本で対照的な展開を見せている。
欧州では事故や迷惑行為を背景に規制が強化され、特に中国製電動キックボードの売れ行きが低迷、市場から締め出されるケースも増えている。
一方、日本では規制緩和に乗じてシェアリングサービス「Luup」が中国製と思われる車両を展開し、特に訪日中国人観光客をターゲットにした事業拡大を進めているが、その安全性や社会的影響に批判の声が高まっている。

欧州での規制強化と市場の鈍化

先行する欧州では、電動キックボードの普及に伴う事故や不適切な駐輪が社会問題化し、既に厳格な規制が導入されている。
主な事例は以下の通り。

  • フランス(パリ): 2023年4月、住民投票(反対9割)によりレンタル電動キックボードを全面禁止。2人乗りなどの違反や死亡事故が問題。
  • シンガポール: 2019年11月から歩道での利用を全面禁止。違反者に罰金約20万円または禁錮3ヶ月。歩行者との接触事故や死亡事故が背景。
  • カナダ(モントリオール): 2020年にレンタル全面禁止。駐車違反(指定ゾーン外80%)や300枚以上の違反チケットが問題。現在、公園内での復活検討中。
  • イタリア(ローマ): 2022年から18歳以上限定、レンタル企業を3社に制限(車両数14,500台から9,000台に削減)、速度制限20km/h(歩行者エリア6km/h)。2年間で17人の死亡事故。
  • イギリス(ロンドン): 18歳以上で免許必須、レンタル車両のみ合法(時速20km/h)。2021年に負傷者229人(重傷67人)、バッテリー火災で公共交通機関での使用禁止。
  • デンマーク(コペンハーゲン): 2020年にレンタル撤去、2021年に再導入(都心部貸し出し禁止、240の駐車ゾーン限定、ヘルメット義務)。事故多発が原因。
  • トルコ(カドゥキョイ): 歩道の車両強制撤去。歩道占拠による歩行困難が問題。

これらの地域では、中国製の電動キックボード(Segway-NinebotやOkaiなど)が主に使用されていたが、規制強化により市場は大幅に縮小。
2024年7月の欧州プラグイン車両登録台数は前年比6%減少し、ドイツでの補助金削減や中国製車両への関税が追い打ちをかけた。

いつもの「欧州を見習え派」はどこへ行ったのか?こんな時こそ見習えと言わねばウソになるだろう。

日本の規制緩和とLuupの便乗拡大

【画像】規制緩和のイメージ

日本では、2023年7月の道路交通法改正により、電動キックボードが「特定小型原動機付自転車」に分類され、ヘルメット着用が任意となるなど規制が緩和された。
これを好機と見たLuupは、電動キックボードと電動アシスト自転車のシェアリングサービスを全国展開。「中国のメーカーと共同開発、企画は日本で」と言いつつも製造はやはり中国だと考えられる。
Luupの公式発表には具体的な製造国やメーカーの記載がなく、直接的な証拠は限定的。ただし、電動キックボード業界のグローバルな製造動向などから、中国製である可能性が極めて高い。

何だか「中国製電動キックボードが欧州で売れなくなったから日本で売る」という風に見えて仕方がないのだが?

このビジネスモデルは、品質管理や安全性の不透明さを招き、欧州の失敗を繰り返すリスクをはらんでいる。
自転車規制厳格化と電動キックボード緩和の矛盾 自転車の規制は近年、事故減少と安全確保を名目に厳格化が進んでいる。
具体的な内容は以下の通り。

  • 車道通行原則の強化(2022年改正): 自転車関連事故の微増を受け、歩道通行を例外的に制限し、車道移行を強制。自転車専用道路やナビマークの整備を推進。
  • 自転車運転者講習制度(2015年導入): 信号無視や酒酔い運転など14の危険行為を3年以内に2回以上繰り返した場合、講習受講を義務化。違反には5万円以下の罰金。
  • 飲酒運転の罰則強化: 酒酔い運転で5年以下の懲役または100万円以下の罰金、酒気帯び運転で3年以下の懲役または50万円以下の罰金。
  • 傘差し・スマホ使用の禁止: 各自治体の施行細則で5万円以下の罰金を科し、2020年以降の事故増加で取り締まり強化。
  • 自転車保険の義務化: 2015年以降、約半数の自治体で加入義務化。2023年までに全国拡大。
  • 青切符制度の検討(2023年以降): 信号無視や一時不停止に反則金を導入、東京都で試験運用中。

これに対し、電動キックボードは2023年7月の規制緩和で免許不要、ヘルメット任意、歩道走行が可能となり、自転車の車道強制とは正反対の動きを見せている。
この矛盾は、飲酒事故率が自転車の22倍に達する危険なモビリティを無責任に普及させてしまうという結果を招いた。行政の二重基準は交通混乱を招く愚策として批判が高まっている。

Luupの「天下り」疑惑とロビー活動の懸念

Luupの拡大戦略にさらなる影を落としているのが、2024年10月16日に発表された新経営体制だ。元警視総監の樋口建史氏を監査役に迎え入れたこの人事は、即座に「天下り」との批判を呼び起こした。
樋口氏は警察での35年の経験を活かし、安全性向上に貢献するとコメントしているが、ネット上では「元警視総監が経営陣って露骨すぎない?」「ズブズブじゃん」との声が噴出。

X投稿では1万2000件以上のリポストを集め、経済産業省出身の弁護士・國峯孝祐氏の社外取締役就任も相まって、警察や行政からの「天下り」によるロビー活動を疑う意見が相次いでいる。

こうした人事は、規制緩和後のトラブル多発(飲酒事故や違反行為)を背景に、Luupが公的権威を味方につけ、厳しい規制を回避しようとする利益優先の姿勢を象徴しているとの指摘が強い。
欧州では安全問題が禁止につながったように、日本でもこうした「ズブズブ」の関係が公正な監督を歪め、社会的リスクを増大させる恐れがある。

中国人観光客ターゲットの問題点とWeChat連携

Luupは、2024年12月のビザ緩和による中国人観光客の増加に便乗し、2025年6月から中国のソーシャルプラットフォーム「WeChat」および「WeChat Pay」と連携を開始。

【画像】中国と日本

WeChatのミニプログラムを通じて、クレジットカードを持たない中国人観光客が電動アシスト自転車をレンタルできるサービスを展開しているが、電動キックボードはシステムの都合を理由に対象外としている。

一見利便性を高める施策だが、日本の交通ルール に不慣れな観光客への対応が不十分との批判が強い。
利用には交通ルール動画の視聴と8問のテスト全問正解が求められるが、短時間のテストで安全意識が身につくか疑問視されている。

安全性への深刻な懸念

Luupの中国人観光客ターゲット戦略に対し、X上では「日本の交通ルールを理解していない観光客による事故多発が予想される」「事故時の責任や補償が曖昧」との批判が噴出。
欧州では同様の問題が禁止につながったにもかかわらず、Luupは利益優先で安全対策を後回しにしているとの指摘がある。
交通ルール教育の強化を謳うものの、実効性に乏しく、都市部の歩行者や既存交通との衝突リスクが高まっている。

そもそも、あの小さい車輪では石、段差などで簡単に転んでしまう。そんなもので車道を走る事自体が危険だ。

さらに深刻なのは、警察庁の2025年上半期データで明らかになった飲酒事故の異常な高さだ。
特定小型原動機付自転車(電動キックボードを含む)の飲酒事故率は約20%で、一般原付の30倍、自転車の22倍に達し、事故の多くは20〜30代が占めている。

欧州の飲酒関連事故が規制強化の引き金となったように、日本でも同様の惨事が繰り返される恐れがあり、社会全体のリスクを増大させている。

今後の課題と警鐘

欧州では事故や違反を理由に電動キックボード市場が縮小する中、日本ではLuupが規制緩和の隙をつき、中国製車両と中国人観光客に依存した事業を急拡大させている。
しかし、安全性軽視や社会的な影響への配慮不足は、欧州の二の舞を招く危険性を孕む。日本のモビリティ業界に革新をもたらすか、それとも事故と混乱の温床となるか、厳しい監視が必要だ。

また、ヨーロッパ各国との対比などを含めて、このような視点でのマスコミ報道がほとんどなされない点にも要注意である。

参考記事

  • 【TOMORUBA】新たな局面を迎えるかーー厳格化が進む「電動キックボード」各国の規制状況は? 2023年04月20日
    https://tomoruba.eiicon.net/articles/4127
  • 【Merkmal(メルクマール)】電動キックボードが嫌われる「本当の理由」とは? 大学教授が解説、規制緩和がもたらす都市交通の「多重的なジレンマ」とは 2024.10.23
    https://merkmal-biz.jp/post/77626
  • 【警視庁】自転車運転者講習制度
    https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/bicycle/koshu.html
  • 【ITmediaNEWS】電動キックボードのLuup、元警視総監が監査役に 経産省出身者も 2024年10月16日
    https://www.itmedia.co.jp/news/spv/2410/16/news146.html
  • 【週刊現代】「元警視総監が経営陣って露骨すぎない?」トラブル続出の電動キックボード、大手Luupの「ロビー活動」にネットがざわつく理由 2024.10.17
    https://gendai.media/articles/-/139611
  • 【週刊文春】「ズブズブじゃん」電動キックボード・Luup社監査役に元警視総監が就任 “天下り”批判殺到について聞いた!「ご指摘のことに関しては…」 2024/10/22
    https://bunshun.jp/denshiban/articles/b9840
  • 【Luup】LUUPが中国「WeChat Pay」と連携し、WeChatミニプログラムをリリース 2025.6.10
    https://luup.sc/news/2025-06-10-wechat/

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