中国のウイグル弾圧でウイグル族の出生率が低下している件について、欧米と日本のメディアの報道比較
中国のウイグル弾圧についてですが、2021年12月2日の西日本新聞の報道によるとウイグル族が8割以上を占める地区での出生率が劇的に下がっており、強制的な不妊手術等で出生率を抑制されている疑いが強まったとの事です。
以下は西日本新聞の記事からの引用です。
【西日本新聞】ウイグル族の集住地域の出生率、5年で2―9割減 人口抑制策“狙い撃ち”の疑い 2021/12/2 6:00
中国の新疆ウイグル自治区で、ウイグル族が人口の8割超を占める28市県のうち27市県の出生率が、2014年~18年の5年間に約2~9割減少していたことが自治区政府の統計資料で分かった。出生率が下がる一方、死亡率が高まり、移住を除く人口増加率が5年間で約10分の1に低下した地域もあった。漢族が集まる地域は出生率が上がっており、不妊処置強要などウイグル族を狙った人口抑制策が実施された疑いが強まった。引用:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/840492/
- 【西日本新聞】新疆ウイグル出生率2年で半減 中国統計入手、不妊処置が急増 2021/5/19
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/740806/
ある民族の出生率を妨げる政策を実施している訳で、これはジェノサイドにあたると欧米のメディアでは中国を非難する声が強まってきています。
以下はBBCとCNNの記事です。
【BBC】中国の人口政策で、ウイグル族の出生数が数百万減少も=研究 2021年6月8日
漢族の比率が大幅増か
ゼンズ氏の研究によると、中国政府は新疆地区に主要民族の漢族を移住させ、ウイグル族などを転出させる施策も進めている。
新疆地区の漢族の人口比率は現在8.4%だが、2040年までには約25%に増える見通しだという。引用:https://www.bbc.com/japanese/57395457
【CNN】新疆ウイグル自治政府、出生率の急落認める 強制的な不妊手術は否定 2020.09.22
CNNの記事は、新彊の少数民族の出生率を押し下げる意図的な試みとして、避妊や不妊手術が強制的に実施されていると報じた。
~中略~
ゼンツ氏は、こうした行為は「ある集団での出生を妨げる目的で措置を課している」点で、国連のジェノサイドの定義にあてはまると主張する。引用:https://www.cnn.co.jp/world/35159869.html
ウイグル族の出生率を下げるだけでなく、新疆地区への漢民族の移住、ウイグル族の転出をさせる政策も進めているのだという。
これは民族抹殺そのものではないのか。
共産主義犠牲者記念財団(米ワシントン)の研究員で新彊研究の専門家であるエイドリアン・ゼンズさんによると、国連のジェノサイドの定義に当てはまるという。
以下、海外のメディアでの報道をピックアップしてみます。
- 【ニューズウィーク】ウイグル「ジェノサイド」は本当だった:データが示すウイグル族強制不妊手術数 2021年5月20日
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/05/post-96322.php - 【ロイター】中国、新疆ウイグル自治区で出生率抑制=豪シンクタンク 2021年5月13日
https://jp.reuters.com/article/china-xinjiang-births-idJPL4N2N01GC - 【AFP通信】中国の人口抑制策、新疆の少数民族400万人の出生に影響か 研究 2021年6月9日
https://www.afpbb.com/articles/-/3350766
一方、日本国内の新聞社はどうか
まずは朝日新聞の記事を見てみましょう。
【朝日新聞】ウイグルで急増する不妊手術 米「ジェノサイド」と非難 2021/2/5
中国政府が「一人っ子」政策を廃止して出産の奨励を進めるなか、新疆ウイグル自治区で女性の卵管や男性の輸精管を縛る不妊手術が急増していることが中国政府の統計で明らかになった。米国政府などはウイグル族を民族として消滅させようとする「ジェノサイド(集団殺害)」だとして非難しており、米中間の新たな対立点にもなりそうだ。引用:https://www.asahi.com/articles/ASP2474KHP24UHBI00S.html
- 【朝日新聞】ウイグル迫害、中国が反論 「ウイグル族の人口増加」 2021/9/28
https://www.asahi.com/articles/DA3S15058716.html - 【朝日新聞】中国政府「ウイグルは人口増」 自治区の白書公表、抑圧の指摘に反論 2021/9/27
https://www.asahi.com/articles/ASP9W6QR3P9WUHBI01W.html - 【朝日新聞】ジェノサイド認定は「下心あるデマ」 中国外相の猛反論 2021年3月7日
https://www.asahi.com/articles/ASP376V0MP37UHBI00Q.html
西日本新聞が人口推移等の詳細を分析しているのに対し朝日新聞は「米国がジェノサイドと非難し、新たな対立を煽っている」とでも言いたげな書き方だし、中国側の反論・言い分もそのまま掲載し、中国寄りな傾向にあるのではないか。
また、毎日新聞も同様の傾向が見受けられます。
以下に記事を示します。
【毎日新聞】中国のウイグル弾圧「ジェノサイド」認定に日本はなぜ慎重なのか 2021/3/12
1948年に国連で採択されたジェノサイド条約は、人種や民族、宗教によるグループを破壊する目的で①メンバーを殺害する②重大な身体的・精神的危害を与える③身体的な破壊をもたらすための生活条件を課す④出生を防止する措置を強制する⑤子供たちを別のグループに強制的に移す――と定義している。
ただ、ポンペオ氏は中国政府のどのような行為が「ジェノサイド」なのかや、ジェノサイド条約にどう関わるかを説明したわけではない。引用:https://mainichi.jp/articles/20210312/k00/00m/030/049000c
- 【毎日新聞】政府、中国のウイグル弾圧を「ジェノサイドとは認めず」 米国務省認定と相違 2021/1/26
https://mainichi.jp/articles/20210126/k00/00m/010/145000c
中国政府のどのような行為が「ジェノサイド」なのか
を米国側は説明出来ていない、日本政府は中国のウイグル弾圧をジェノサイドとは認めていない、等、中国側に都合の良い内容の記事を書く傾向にあるように思えます。
南京大虐殺や従軍慰安婦問題では根拠薄弱でも被害者と自称する人々に肩入れしていたのではないのですか。
何故ウイグル問題では被害者の立場に立ってくれないのでしょう。
日頃、声高に叫んでいる人権はどこに行ったのですか?
中国に対する忖度としか思えません。
それに対して、産経新聞は以下のように中国の反論を掲載するにしても独自論評を見出し内にも付け加えています。
【産経新聞】「ウイグル族は増加、弾圧ない」… 中国白書の主張に〝穴〟 2021/10/25
「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と米欧が批判する民族弾圧を全否定した。だが、専門家は「弾圧が始まった17年以降の変化を無視している」と白書の〝穴〟を指摘する。引用:https://www.sankei.com/article/20211025-ZWOSEKL64BJVDNUDTTNSXFXK2Q/
「ウイグル族は増加、弾圧ない」… 中国白書の主張に〝穴〟
となっています。
せめてこれぐらいのバランスは取ってもらいたいものです。
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冒頭のアイキャッチ画像はGreg NewmanによるPixabayからの画像。
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