日本の地方都市をアフリカに捧げる「ホームタウン」炎上をSNSのせいにするJICAと日本メディア
外務省が所轄するJICA(国際協力機構)が2025年8月のTICAD(アフリカ開発会議)に合わせて推進したアフリカ・ホームタウン認定が移民・定住を連想させるとして大炎上を起こしている。
何が起こっていたのか?
「ホームタウン」の命名が移民連想の火種に
JICAは、少なくとも4つの日本の自治体をアフリカ諸国の「ホームタウン(故郷都市)」に指定する予定だという。
タンザニアの「ホームタウン」として山形県長井市、ナイジェリアの「ホームタウン」として千葉県木更津市、ガーナの「ホームタウン」として新潟県三条市、モザンビークの「ホームタウン」として愛媛県今治市を認定。
- 【NHK】JICA 国内自治体をアフリカ各国の「ホームタウン」に認定へ 2025年8月17日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250817/k10014895941000.html
外務省は「アフリカの活力を日本に取り込んでいく」「アフリカの課題解決と日本の地方活性化に貢献」「アフリカとのかけ橋となる人材の育成」などと説明するが、姉妹都市ではなく「ホームタウン」という名称が移民、移住、定住を連想させ、炎上するに至った訳だ。
ただでさえオーバーツーリズムや民泊、移民・難民、技能実習生で外国人が増え、治安・マナーの悪化が問題視されるこの情勢下で、さらに地方自治体をアフリカ諸国の故郷に認定しようというのだから只事ではない。
各自治体も嬉しそうにXでポストしていた。
【三条市が認定されました!】
— 三条市役所 (@sanjo_city) August 21, 2025
横浜での「JICAアフリカ・ホームタウンサミット」で、市長が登壇🌍🪷
このたび三条市は、JICAから「ガーナのホームタウン」に認定されました。
パネルディスカッションでは、ガーナと三条市の交流ビジョンを共有し、地域と国際協力の可能性を語りました✨✨#三条市… pic.twitter.com/W1Ycv4zLLd
かねてより今治が誇る海事産業の分野で交流を深めてきていたモザンビークと、さらに手を取り合うご縁ができました。
— 今治市(@imabari_city) (@imabari_city) August 21, 2025
”瀬戸内の世界都市”の実現へ、世界に通じる人材の育成を目指していきます。https://t.co/f9XuLe64ok
また、TICAD出席中の国際移住機関(IOM)のエイミー・ポープ事務局長は、2025年8月20日の訪日インタビューで、日本国内で労働力の不足が見込まれる地域を特定し、外国人労働者への日本語教育を含めた受け入れ環境を整備し、自治体、医療機関、学校と連携すべき
と訴えている。
欧州各国では不法移民対策の強化を進めているが日本は同じような課題は抱えていないとも発言している。
これらが移住・移民政策を連想させる文脈を強めてしまった。
- 【毎日新聞】「働き手の能力向上を」 外国人労働者巡り 国連機関トップ 2025/8/21
https://mainichi.jp/articles/20250821/k00/00m/030/198000c
Googleマップで「木更津市役所」が「ナイジェリア市役所」に改ざんされたり、この四自治体には、抗議の声や抗議の電話が殺到。
JICAと外務省は、国民の懸念をあまりに軽視し過ぎだ。
- 【産経新聞】「電話が鳴りやまない」 アフリカ・ホームタウン認定で千葉・木更津市が対応に追われる 2025/8/25
https://www.sankei.com/article/20250825-5HA7FEW6QBMRPK52U6U5VCVUK4/ - 【読売新聞】4自治体をアフリカの「ホームタウン」認定、「治安悪化につながる」と憶測広まり苦情殺到 2025/08/25
https://www.yomiuri.co.jp/national/20250825-OYT1T50132/
これらを受けてJICAは
先般のTICAD9において国際協力機構(JICA)が発表した「JICAアフリカ・ホームタウン」に関して、国内外で事実と異なる内容を含む報道や発信が行われています。本件に関してHP上で和文、英文で事実関係を説明していますので、お知らせします。https://t.co/zv7crMJJOf
— JICA 国際協力機構 (@jica_direct) August 26, 2025
「事実と異なる内容及び誤解を招く表現等が含まれております。」
「移民の受け入れ促進、日本と当該諸国との往来のための特別な査証の発給等の記載は、いずれも事実に反します。」
と発表するが、時既に遅し、だった。
木更津市もXの投稿で「移住・移民の受け入れ等の事実は、一切ございません」と否定している。
JICAアフリカ・ホームタウン認定状交付に係る木更津市の見解
— 千葉県木更津市(公式) (@kisarazu_city) August 25, 2025
一部のSNS等で報じられている、移住・移民の受け入れ等の事実は、一切ございません。
木更津市長のコメントを公表いたしましたので、詳しくはこちらをご覧ください。https://t.co/GLY48PMWUd
「特別ビザ」「長井市を捧げる」と報道する海外メディア
このホームタウン認定、海外ではどのように報道されているのか?
BBCでは、
Jica name Kisarazu as hometown for Nigerians
23 August 2025※以下、日本語訳
「ナイジェリア情報・国家指導省は8月22日(金)にこの取り組みについて発表し、文化外交の深化、経済成長の促進、労働力の生産性向上に向けた取り組みであると述べました。
同省によると、第9回アフリカ開発会議(TICAD7)の傍らでこの取り組みを発表しました。
また、日本政府は、木更津市に居住・就労を希望する、高度なスキル、革新性、才能を持つナイジェリアの若者向けに特別なビザを創設する予定であると発表しました。
数日後、日本政府は、移民の受け入れを促進する措置や、アフリカ諸国の住民向けの特別ビザの発行は予定していないと発表しました。」https://www.bbc.com/pidgin/articles/cgm2p4d8m9mo
と報道。
ナイジェリア政府は、当初、木更津市が移民を受け入れるために日本政府が特別ビザを発行すると認識していたようだ。
ナイジェリア政府の公式発表記事にも
第9回アフリカ開発会議(TICAD7)に合わせて発表されたこの新たなパートナーシップの下、日本政府は、木更津市に移住して生活と就労を希望する、高度なスキルと革新性、そして才能を持つナイジェリアの若者のための特別なビザを創設します。
技能向上を目指すナイジェリア出身の職人やその他のブルーカラー労働者も、日本で就労するための特別ビザの恩恵を受けることができます。
と移住、特別なビザ創設と確かに書いてある。
この記事は削除されていたが、web魚拓が残っていたのでURLを示しておく。
- 【ナイジェリア政府】Japan Designates City of Kisarazu as Hometown for Nigerians
August 22, 2025
https://megalodon.jp/2025-0826-1111-14/https://statehouse.gov.ng:443/news/japan-designates-city-of-kisarazu-as-hometown-for-nigerians/
タンザニアタイムスでは、ホームタウン認定を
「japan dedicates nagai city tanzania(日本がタンザニアに長井市を捧げる)」
と見出しを付けて報道。
タンザニアの人々は、タンザニア人のために日本が都市を提供してくれた、ぐらいに思ってるという事だ。
その後、JICAから内容を訂正するよう申し入れが行われたためか、ナイジェリア政府の記事は削除され、タンザニアタイムスの記事見出しも
Japan Designates Nagai City ToTanzania(日本は長井市をタンザニア向けに指定する ※英語としてやや不自然?)
というものに変わっていた。(URLはdedicatesのままだが)
- Japan Designates Nagai City ToTanzania
https://tanzaniatimes.net/japan-dedicates-nagai-city-to-tanzania/ - 【朝日新聞】「特別ビザ」誤情報問題 ナイジェリア側が声明削除、「誤って解釈」 2025/8/27
https://www.asahi.com/sp/articles/AST8V525WT8VUTIL03XM.html
JICAの意図(交流促進)と、命名の軽率さと広報戦略の失敗で、実態とイメージが乖離しすぎてしまった。
ホームタウン認定を移住、定住させるのかと受け取るのは誤解ではないだろう。
JICAの表現が混乱を助長し、海外メディアの誤報を誘発させたのである。
訂正すれば済む、というレベルではない。
誤情報の発生源をネット、SNSに転嫁する日本のメディア
これまで指摘したように、誤情報の拡散は外務省、JICAの仕事のいい加減さ、配慮の無さ、曖昧なシステムで提携しようとしたのが直接的な原因だ。事前の調整不足は明らかだろう。
そのせいで海外メディアまで誤情報を流し始め、混乱の元凶となった。
それを日本のメディアや地方自治体の長は何を勘違いしているのか、誤情報やデマの発生源をネットやSNSに転嫁し、責任を回避するかのような報道ぶりである。
例えばNHKの報道は、こうだ。
「JICA」の不正確な内容の投稿 SNSで広がる 拡散せず注意をhttps://t.co/VuNfPvBu76 #nhk_news
— NHKニュース (@nhk_news) September 1, 2025
千葉県知事はSNSの規制がどうとか、頓珍漢な事を言っている。
- 【産経新聞】ホームタウン「虚偽でも拡散で利益得る集団ある」「SNS適切規制議論を」 千葉知事指摘 2025/8/28
https://www.sankei.com/article/20250828-6K6B5DS7JFNWLCIKP3EI236IQU/
デマだと言うなら、当該国のメディアや政府に言うべき。
SNSで勝手にデマが広がった風に言うのは間違いだし、責任の所在を曖昧にするだけだ。
アフリカ四国の治安状況:外務省渡航情報からみるリスク
外務省の海外安全ホームページ(2025年8月時点)に基づき、事業対象国、モザンビーク、ガーナ、ナイジェリア、タンザニアの治安状況をまとめてみよう。これら国々は、日本の常識では計り知れない程の治安の悪さだ。
移住、移民をするのだとしたら、どれほどのリスクを伴うのか。あれほどの抗議に発展した理由の一つがこれだ。
ちょっと見てみよう。
- タンザニア
- モザンビーク国境で武装グループの襲撃と一般犯罪増加(レベル1全土)
- ガーナ
- 国境地帯でテロ脅威と部族衝突(レベル2地域あり)
- モザンビーク
- 北部で武装勢力による襲撃が頻発(レベル3地域あり)
- ナイジェリア
- 全土で「レベル2不要不急の渡航中止」「レベル3渡航中止勧告」。北東部では「レベル4退避勧告」。
全国で誘拐・テロ・強盗が多発。
特にナイジェリアでは、イスラム過激派ボコ・ハラムがモスクや村を繰り返し襲撃(例:2025年9月19日カツィナ州モスク襲撃で50人死亡・60人拉致、9月5日ボルノ州村攻撃で60人殺害、10年以上で数万人犠牲)。
- 【産経新聞】ナイジェリア北東部 イスラム過激派ボコ・ハラムが村を攻撃、住民ら60人を殺害 2025/9/7
https://www.sankei.com/article/20250907-ZOA547OANZP6FP7YJZ5DVDQ4WI/
元プロボクサーでナイジェリア人とのハーフである細川バレンタイン氏はYouTubeでこのように語っている。
ナイジェリアでは、
- 女性のバッグにスリをする時はナタで腕ごと切断
- 高速道路に人の手や足が落ちているのが普通
- 市場で盗みを働いた子供が袋叩きにされタイヤを嵌められそのまま焼かれる
のだと言う。
当事国の関係者が語るその実態はあまりにリアルで戦慄する。
- 【放送禁止の移民問題】※緊急配信※ JICAアフリカホームタウン騒動の真実 , フィフィ × 細川バレンタイン × やながせ裕文(虎ノ門ニュース)
https://youtu.be/S6etbtoji1E?si=mC9FDsDxGgtgbO8n
何故わざわざこのような日本とは全く価値観も違い、治安の悪い国々と「ホームタウン」制で交流を結ぶ必要があるのか?
帰国前提のインターンシップを超えた交流で、日本国内の治安悪化や社会負担を招くリスクは無いのか?
JICAのリスク評価は緩すぎるように思える。
林官房長官の「インターン安心論」の虚構
2025年8月26日、林芳正官房長官は記者会見で「移民ではなく、帰国前提のインターンシップ」と主張し、「心配無用」と訴えている。
しかし、既に技能実習制度で迎え入れた外国人の内、9,753人が失踪(2023年、過去最多)しており、帰国前提の仕組みが全く機能していない実態がある。
直近では、現在開催中の大阪万博でも、国際交流プログラムで滞在中のエチオピア人女性が行方不明になっている。
政府の楽観論は、あまりに現実と乖離し、不法滞在などの事業の潜在リスクを無視しているのではないか?
- 【47NEWS】移民受け入れ想定せず 林官房長官、ホームタウン巡り 2025年08月26日
https://www.47news.jp/13064587.html - 【産経新聞】万博の国際交流プログラムで滞在中、行方不明 エチオピア人女性の在留資格取り消し要望 2025/9/5
https://www.sankei.com/article/20250905-KOZUE5XF5FMPBGKDMZ6J4H3ITI/
地政学的背景:日本のアフリカ戦略と中国の影響
外務省の考えも分からないではない。
中国はアフリカ諸国への経済援助や外交投資を通じて影響力を強め、国連などの国際機関でアフリカの投票行動を味方につける戦略を取っており、これが日本に不利な結果を生む事例が発生しているのだ。
例を挙げると、
- 国連安保理改革
- 2005年頃のG4提案で日本、ドイツ、インド、ブラジル(G4)が常任理事国入りを目指した提案に対し、中国はアフリカ諸国を味方につけ強く反対。
- 国連人権関連決議
- 1990年代-2000年代では、国連人権関連決議において中国の人権問題(新疆やチベット)に関する国連決議で、アフリカ諸国が中国を擁護する投票を繰り返した。
- 南シナ海関連の国際支持
2016年の南シナ海仲裁裁定(PCA、常設仲裁裁判所)で、中国は裁定を拒否し、39のアフリカ国から支持声明を集めた。これは国連総会や安保理での関連議論に影響を与え、中国の領土主張を強化する事になった。
などなどである。
要は中国はアフリカに金をばらまき、いざという時の味方を増やしているのである。
おそらく外務省はこれらに対抗するハラなのだろう。
その意図は分かる。しかし今回のホームタウン認定は失策だった。
- 【産経新聞】「日本の利益だけ考えては…」石破首相、アフリカとの新経済圏構想を提唱 中国念頭か 2025/8/22
https://www.sankei.com/article/20250822-437OELTAF5NCZHCK7YDBZE6OTU/
混乱の責任を取って計画を白紙化せよ
現地のメディアや政府の誤解だ、ホームタウン事業に元々そんな意図は無かった、などと責任転嫁している場合ではない。
2025年の参院選では、外国人問題は重要な争点だった。
当該国に、日本の地方都市を捧げると誤解させた以上、ホームタウン事業の混乱と将来の治安悪化リスクを総括し、外務省・JICAは失態を猛省の上、計画を一旦白紙に戻すべきだ。






