反基地派による沖縄県民の世論調査結果の恣意的な解釈とその報道

沖縄県知事選の投開票日だった2022年9月11日の翌日から年末まで実施された、沖縄県民への世論調査の集計結果が2023年6月5日に研究者グループにより発表された。琉球新報等の地元紙をはじめ毎日新聞等の全国紙も報道していた。
その集計結果に対する当の研究グループのコメント、マスコミの報道内容が「若年層が反基地運動を無意味と考えるのは諦めているから」と結論づける等、非常に恣意的だと感じた。
設問の仕方にも何かの意図を感じるので言及しておきたい。
以下、詳しく見てみる。

世論調査の結果データ

特徴的だったデータをいくつかピックアップしてみる。
まず、「中国の軍事力増強は、日本の安全保障上の脅威である」という設問には賛同率が81%だった。
次に「自衛隊は現在よりももっと強化すべきだ」「日米安保体制は現在よりももっと強化すべきだ」はそれぞれ40%、39%の賛同率で、やはり沖縄県民も中国の軍事力は脅威だと感じているようだ。

一方では「沖縄に米軍基地が集中しているのは不平等である」という設問には賛同率が70%、「沖縄の負担は過重であっても、戦略的な重要性から基地が集中するのはやむを得ない」の設問には賛同34%、反対45%となり反対の方が多かったという。
中国への脅威は認識しながらも、沖縄に米軍基地が集中するのは不平等だなと感じているという事になる。

また「国防政策は政府に決定権があるので基地反対運動をやっても意味がない」との設問に、全体では賛同が39%、反対が40%と拮抗したのに対し、18～34歳の若年世代だけを見ると過半数を超える55％が賛同したという。これは、すべての世代の中で唯一、過半数を超えた世代だ。

この結果から、この研究チームは「若者は反基地運動を諦めている」と結論づけているが、本当にそうか？
私には、若者の方が中国の脅威を正しく認識しそれに対処しなければならないと思っているという結果を示しているように思えるが。

自分を何人と思うか？とわざわざ聞く意図は何だ

【画像】沖縄のイメージ

『ご自身を「何人」と思うか』という設問には「沖縄人(ウチナーンチュ)で日本人、沖縄人(ウチナーンチュ)、日本人、宮古人(ミヤコンチュ)で日本人、八重山(ヤイマンチュ)で日本人、宮古人(ミヤコンチュ)、八重山(ヤイマンチュ)、その他」とあり、沖縄人、宮古人等というローカルアイデンティティに紛れ込ませて「日本人」というレイヤーの違う項目がある。

結果、沖縄人で日本人というハイブリッド型が最も多く過半数を超えた一方で、65歳以上の方の「日本人」単体の回答は1割を切ったそうだ。

何だこの設問は…？「日本人とは思っていない沖縄人がいる」という結論を導きたかったように思える。
これの行き着く先には「沖縄独立」が見えてくるだろう。何だか誘導尋問に似ている。

世論調査を実施した「沖縄調査プロジェクト組織」

今回の沖縄の世論調査を実施した研究者グループの主要メンバーを見ると、いずれも辺野古基地反対や、日本人の右傾化、ネット右翼などをテーマにした本を出版している大学教授らである。
毎日新聞のインタビューにも「政府のやり方や本土の世論など諦めさせている構造を問うべき」と答えている。
つまり、左派論者が自らの主張に都合の良いデータ解釈で若者は反基地運動を「諦めている」と結論づけ、マスコミもそのままの論調で報道している訳だ。
特定のバイアスがかかった報道をする印象的操作の好例ではなかろうか。

参考記事

沖縄調査プロジェクト組織
https://w3.waseda.jp/prj-ipa/okinawaprojectgroup/
【国際化と政治参加に関する研究プロジェクト】「政治参加と沖縄に関する世論調査」調査報告書(速報版) 2023 年 6 月版
https://w3.waseda.jp/prj-ipa/wp-content/uploads/sites/187/2023/06/ReportOkinawa2022compressed2.pdf
【琉球新報】＜社説＞県民世論調査　沖縄は地方自治の埒外か　2023年06月07日
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1724326.html
【琉球放送】「基地反対運動は無意味」 34歳以下では過半数に　若い世代の「諦め志向」の表れか　2023年6月5日
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rbc/526879?display=1
【毎日新聞】沖縄県民世論調査　米軍基地集中に「不平等」7割　一方「諦め」も　2023/6/5
https://mainichi.jp/articles/20230605/k00/00m/040/146000c