スイスの「民間防衛」と現在の日本のマスコミ・メディアについて

スイスの「民間防衛」と現在の日本のマスコミ・メディアについて

スイスといえば、アルプスの少女ハイジで描かれる豊かな自然や、学校で習った「永世中立国で平和な国」といったイメージがあるかと思う。
しかし、

  • 空港が破壊されても、高速道路を代替滑走路として使える
  • 徴兵制が敷かれているだけでなく、国民全体で国防を担おうという意識のある「国民皆兵」である
  • 兵役が終わってもライフルが無料で支給されるので、一般家庭に普通にライフルがある

という重武装国家であり、教科書で習うような単純な「平和国家」ではない。
それと、日本と直接交戦していない非交戦国でありながら日本から戦後に賠償金を奪っていった国であることも意外に知られていない事実なので付け加えておく。

そんなスイスで、冷戦期に政府から確定に配布された有事の際の備えを説いたハンドブック「民間防衛」を紹介しておく。
その民間防衛の中でも特に、情報戦、マスコミについての言及が60年代後半の冷戦期に書かれたものとは思えないほど現代でも通用する内容なのが驚きである。 (ちなみに日本語版が出版されたのは1970年・原書房)

以下に、日本語版からいくつか情報戦争・マスコミ・メディアについて言及している個所を引用してみようと思う

心理的な国土防衛

P145
軍事作戦を開始するずっと前の平和な時代から、敵は、あらゆる手段を使ってわれわれの抵抗力を弱める努力をするであろう。
敵の使う手段としては、陰険巧妙な宣伝でわれわれの心の中に疑惑を植え付ける、われわれの分裂をはかる、彼らのイデオロギーでわれわれの心をとらえようとする、などがある。
新聞、ラジオ、テレビは、われわれの強固な志操を崩すことができる。
こうして、最も巧妙な宣伝が行われる。これにだまされてはならない。

思い当たるフシは無いだろうか?
憲法九条反対、沖縄米軍基地反対、イージス・システム反対、オスプレイ導入反対、日米同盟反対、集団的自衛権反対、ひと頃は日本共産党を中心とした自衛隊反対…
沖縄米軍基地反対、ひいては沖縄独立論などは「われわれの分裂をはかる」そのものである。

敵は同調者を求めている

P228
数多くの組織が、巧みに偽装して、社会的進歩とか、正義、すべての人人の福祉の追求、平和というような口実のもとに、いわゆる「新秩序」の思想を少しずつ宣伝していく。

この「新秩序」は、すべての社会的不平等に終止符を打つとか、世界を地上の楽園に変えるとか、文化的な仕事を重んじるとか、知識階級の耳に入りやすい美辞麗句を用いて…。
不満な者、欺かれた者、弱い者、理解されない者、落伍した者、こういう人たちは、すべて、このような美しいことばが気に入るに違いない。
ジャーナリスト、作家、教授たちを引き入れることは、秘密組織にとって重要なことである。
彼らの言動は、せっかちに黄金時代を夢みる青年たちに対して、特に効果的であり、影響力が強いから。

また、これらのインテリたちは、ほんとうに非合法な激しい活動はすべて避けるから、ますます多くの同調者を引きつけるに違いない。
彼らの活動は、"表現の自由"の名のもとに行なわれるのだ。

"表現の自由"とはよく聞くセリフである。
直近では愛知トリエンナーレでの「表現の不自由展・その後」のいざこざがある。
ここは表現の自由の名のもとに税金を使って

  • 昭和天皇の肖像を燃やす映像
  • 英霊を貶めるような作品
  • 「慰安婦像」として知られる少女像

を展示して批判を浴びたが、活動家や左派メディアがこぞって「表現の自由」を盾にして擁護していたのが記憶に新しい。

政府の権威を失墜させようとする策謀

P256
その目ざすところは、政府と国民との離間をはかることであって、そのためには、歯向かう者すべてを中傷し、それに対して疑惑の目を向けさせることが必要である、と考えている。
そこで、連邦政府や州当局の有力者が特に狙いをつけられることになる。これらの要人に対して疑惑の目を向けさせることによって、政府の権威は根底から覆されていくのであって、
国民がこれら当局者を信頼しなくなったときこそ、国民を操縦するのに最も容易なときである。

これも日本での報道を振り返ると容易に事例を挙げられる。
直近の事例でいうと安倍政権での

  • 森友・加計問題
  • 桜を見る会問題
  • コロナ対策批判
  • アベノマスク批判
  • 検察官定年延長法案反対

両論併記どころでないメディアからの一方的な批判の嵐だった。
何故そんな「政府の権威を失墜させようとする報道一辺倒」だったのでしょうか。

メディアの支配

P259
新聞、出版物、ラジオおよびテレビは、このような心理戦争の段階においては、まさに決定的な役割を果たすものである。
そのため、敵は、編集部門の主要な個所に食い込もうとする。われわれ国民はこれに警戒を怠ってはならない。
敵を擁護する新聞、国外から来た者を擁護する新聞は相手にしてはならない。
われわれは、われわれの防衛意欲を害するあらゆる宣伝に対して抗議しよう。

そのものズバリの指摘である。
「敵は、新聞、出版物、ラジオおよびテレビの編集部門の主要な個所に食い込もうとする」のである。
敵とは誰、またはどの国であろうか。
考えを深めるきっかけを提供してくれる良い一冊がスイスの「民間防衛」である。


参考:「スイス民間防衛」日本で売れ続ける理由
参考:スイス 武装した永世中立国 ?1? 歴史と将来像 (1)

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