人工衛星・弾道ミサイルを追跡・監視する中国の船を「海洋調査船」「観測船」と呼称するマスコミ

人工衛星・弾道ミサイルを追跡・監視する中国の船を「海洋調査船」「観測船」と呼称するマスコミ
  • ※画像は中国国防部サイトから
    远望5号
    http://www.mod.gov.cn/1dzx/2019-05/05/content_4841200.htm

中国軍が運用する、衛星や弾道ミサイルの追跡・監視船「遠望5号」が2022年8月16日、スリランカのハンバントタ港に入港しました。

この港は、中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」により中国から融資を受けて建設が進められてきました。
しかしその後多額の債務に追い詰められ、99年間にわたり中国国有企業・招商局港口に租借される結果になりました。
中国に運営権を取り上げられてしまった訳で、体の良い植民地支配ですね。
これは援助と引き換えに権益を奪う新たな中国のやり口で、国家版貸し剥がしのようなものです。

報道記事の見出しを見比べてみると…

まあそれは横に置いといて。

それを報道する新聞四大紙を含む、各大手メディアの記事を見てみましょう。

  • 【朝日新聞】スリランカの港に中国観測船が到着 「債務のわな」で注目 2022年8月16日
    https://www.asahi.com/articles/ASQ8J7QC0Q8JUHBI02N.html
  • 【毎日新聞】中国の海洋調査船、スリランカに入港 インド反発 2022/8/17
    https://mainichi.jp/articles/20220817/ddm/007/030/085000c
  • 【読売新聞】中国軍調査船、スリランカ入港…米印は軍事利用警戒 2022/08/17
    https://www.yomiuri.co.jp/world/20220817-OYT1T50051/
  • 【産経新聞】中国調査船、スリランカ・ハンバントタに寄港 米印、軍事拠点化警戒 2022/8/16
    https://www.sankei.com/article/20220816-JHAJMNRMKFKK5NODGWG2AI4TDQ/
  • 【日経新聞】中国調査船、スリランカ入り 「債務のワナ」象徴の港 2022年8月16日
    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM162A30W2A810C2000000/
  • 【時事通信】中国軍観測船が入港 インドと板挟みで迷走―スリランカ 2022年08月16日
    https://www.jiji.com/jc/article?k=2022081600594
  • 【NHK】スリランカに中国調査船入港 隣国インド「監視目的」と警戒感 2022年8月16日
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220816/k10013774421000.html

※赤字は引用者

各メディアとも、見出しに「調査船」もしくは「観測船」と記述していますね。

この遠望5号は、専門家に人工衛星・ロケット・大陸間弾道ミサイル等を追跡・監視する最新鋭の衛星追跡艦と指摘されています。
また、米国防総省によると、中国軍で宇宙、サイバー・電子戦、観測等を担当する戦略支援部隊(SSF)が運用しているとの事。
インドメディアはこの船をスパイ船と呼び、アメリカが港の軍事利用を警戒している状況にあります。
それに何よりも、このような追跡・監視船を調査船、観測船と呼ぶ事自体に違和感があります。
時に右寄り、保守派と見做される産経新聞、読売新聞ですらこのような表現を使う訳です。

中でも特に毎日新聞。
海洋調査と主張しているのは中国外務省の汪文斌(ワンウェンビン)副報道局長であり、これを海洋調査船と呼称するのは完全に中国側に立った目線です。
この見出しには「海洋調査が目的なのでこの地域・海域にとって何ら脅威はもたらしませんよ」という裏の意味があり、中国共産党の代弁者となってしまっている訳ですね。
報道における印象操作の良い見本です。

中国のプロパガンダ紙のチャイナウォッチに協力している毎日新聞ならではの表現ですね。

公平中立のフリをして正体を隠そうなどと思わずに、はっきりと立場を明らかにすればいいのに。

参考

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