イスラエル大使館が毎日新聞に「ジャーナリズムを装ったプロパガンダ」と批判!ガザ報道で問われる報道の公正さ
毎日新聞が8月9日に掲載した「娘奪われても『普通のこと』と言わせるガザの状況 日本で伝える
」という記事について、イスラエル大使館が厳しく反論した。
エマニュエル・ナヴォン次期駐日イスラエル大使は、記事について「バランスの取れた報道とは言えない」と指摘。ガザの死者数の出典、2023年10月7日のハマスによる攻撃、イスラエルとパレスチナをめぐる歴史的経緯などが十分に示されていないと批判した。
さらに「ジャーナリズムを装ったプロパガンダ」とまで表現している。
【ジャーナリズムを装ったプロパガンダ】
— イスラエル大使館 |Israel in Japan (@IsraelinJapan) August 11, 2026
8月9日に毎日新聞が掲載した記事は、バランスの取れた報道とは言えません。歴史の一部のみを取り上げ、出典を明示しない統計を用い、重要な事実を省くことで、結果としてハマス側の主張をほぼそのまま再現しています。… https://t.co/318rZB3E4i
外交官による批判だけに、その言葉をそのまま受け取る必要はない。ただ、実際の記事を読めば、報道の仕方について確認しておきたい点がいくつかある。
死者数を伝えるなら「誰の数字なのか」も必要
毎日新聞の記事では、2023年10月以降のガザでの死者数として7万3000人以上という数字が示されている。
ガザの死者数として広く使われている数字であり、国連などもガザ保健当局の発表を基にした数字を扱っている。しかし、読者に伝える以上、その数字が誰による集計なのか、民間人と戦闘員が区別されているのかといった説明は欠かせない。
「7万3000人が死亡した」という数字だけが提示されれば、読者が「イスラエルによって7万3000人の民間人が殺害された」と受け取る可能性もある。
また、NHKの記事では約10か月間の死者が1250人を超えたこと、ユニセフが少なくとも300人の子どもの犠牲を伝えていることを紹介している。
しかし、この1250人について、誰が殺害したのかという内訳は記事からは分からない。
300人の子どもについても同様だ。
イスラエル大使館が指摘するように、死者数が確認されていることと、その死者一人ひとりについてイスラエル軍による殺害だったと確認されていることは別問題である。
NHKの記事に対してもイスラエル大使館は同様に「NHKの報道は著しく誤解を招くものであり、訂正が必要です。
」と批判している。
NHKの報道は著しく誤解を招くものであり、訂正が必要です。
— イスラエル大使館 |Israel in Japan (@IsraelinJapan) August 10, 2026
ユニセフ(UNICEF:…
戦争に関する数字だからこそ、数字の大きさだけではなく、出典や内訳、分かっていない部分まで伝える必要がある。
10月7日の攻撃はどこへ行ったのか
もう一つ大きいのが、2023年10月7日の扱いだ。
ハマスなどによるイスラエルへの攻撃では約1200人が死亡し、251人が人質として連れ去られた。この出来事が、その後の戦争につながったことは現在のガザ情勢を理解するうえで基本的な事実である。
ところが毎日新聞の記事では、ガザの住民の苦境や証言が詳しく紹介される一方、10月7日に何が起き、その後なぜ大規模な戦闘に至ったのかという説明は薄い。
ガザの被害を伝えることに異論はない。しかし、そこに至る経緯をほとんど説明しないまま被害だけを伝えれば、読者が現在の戦争を理解するための材料は限られてしまう。
歴史も「何を書かなかったか」が重要になる
イスラエル大使館は歴史的な説明についても批判している。
1948年から1967年まで、ガザはエジプト、西岸地区はヨルダンの統治下にあった。イスラエルによる占領が始まったのは1967年である。
また1947年には国連によるパレスチナ分割案が示され、ユダヤ側が受け入れた一方、アラブ側は拒否。その後、周辺アラブ諸国がイスラエルに侵攻した。
もちろん、長い歴史を一つの記事ですべて説明することはできない。
それでも、ある歴史だけを取り上げ、別の経緯をほとんど扱わなければ、読者が受け取る歴史像は変わる。
報道では「何を書いたか」だけでなく、「何を書かなかったか」も重要になる。
毎日新聞とNHKに共通するもの
毎日新聞とNHK。別々の記事だが、イスラエル大使館の批判には共通した部分がある。
死者数や被害を伝える一方で、その数字の出典や限界、個々の死亡について誰に責任があるのかという点が十分に区別されていない。
また、10月7日のハマスによる攻撃や、その後の戦闘に至った経緯についても、記事の中で十分な比重が置かれているとは言いにくい。
もちろん、イスラエル側の主張をそのまま掲載すれば公平になるという話でもない。
重要なのは、一方の主張を事実として扱い、もう一方を背景に追いやるのではなく、確認された事実と当事者の主張をきちんと分けることだ。
イスラエル大使館による「ジャーナリズムを装ったプロパガンダ」という表現は非常に強い。
だからこそ、毎日新聞とNHKには、それぞれの記事について説明する余地がある。
事実、推測、証言、当事者の主張をきちんと区別し、読者が自分で判断できる材料を渡すこと。
それができているかどうかだ。
今回の毎日新聞とNHKへの批判は、イスラエルとパレスチナのどちらを支持するかという話にとどまらない。
NHKは公共放送であり、見出しだけを読む人も少なくない。それだけに、見出しでどこまで断定するのかは重要な問題になる。
日本のメディアが戦争をどう報じ、どこまで検証し、どんな情報を読者に渡しているのか。その報道姿勢そのものが問われている。



